■馬はどんな体をしていて、各部分がどのような働きがあるのか。
ある程度頭に入れておくとパドックなどで、どこを見ればいいのかがわかってパドックが楽しくなります。
★まず、馬の各部の名称をふまえた上で見ていきましょう。
馬の各部の名称
馬の骨の名称
■目
☆馬は頭部の両側に目が位置しているため、とても広い視野が得られます。
瞳孔は横長に開いているため、縦よりも横に視野が広がっていて、その角度は350度まで見ることができます。
しかし、その80%は片目でみているため、視覚による距離の感覚があまりよくありません。
人間が焦点を合わす時に使う毛様体小帯という筋肉も発達していないため、焦点が合いにくい目をしているのです。
そのため眼球は歪んだ形をしていて、遠くを見る時は頭を下げ上目づかいのように見て、近くを見る場合は頭を上げて近くのものを見て焦点を合わせます。
☆また、馬は夜行性ではないのですが、夜目(よめ:夜に暗いところで物をみることができる目)はよく利きます。
網膜の後ろにタペタム(輝板)と呼ばれるものがあり、わずかな光でも物を見ることができます。
(夜行性動物の目が夜に光って見えるのはタペタムに反射しているためです。)
トゥインクルレースやスパーキングナイターでもしっかり見えているということです。
※馬の前後肢にある第1指の跡ともいわれている黒いこぶがありますが、あれも夜目(附蝉ふぜん)といわれています。
☆肉食動物から逃げるため視界の限界の領域に入ってくる動く物体に対して敏感に反応する仕組みになっています。
この視界の限界を遮り、意識を前方に集中させる働きがあるものとしてブリンカーやシャドーロール、ブロウバンドなどがあります。
最近では事前に申請する必要のないチークピーシーズなどもよくみかけます。
臆病な馬がブリンカーの効果でガラリと変わる場合もあります。初ブリンカーなどの馬はチェックしときましょう。
■耳
☆馬の耳は13個の筋肉がついていて左右の耳を別々に180度自由に動かすことができ、可聴域(聞き取れる音の範囲)は3万Hzの高音域の音まで聞くことができます。
(人間の可聴域は20Hz〜2万Hz)
☆肉食動物の存在をいち早く察知できるように音源の定位能力(音の出ている方向、位置を聞き分ける能力)も発達しています。
☆この馬の耳はとても感情に関係があるので、馬の耳を見ると感情を読み取ることができます。
なにかに興味をもつとその方向に耳を向け、耳を立てます。
また、不安な時などは耳をたえず動かしたり、片方が前もう片方が後ろを向くなど落ち着きがなくなります。
人や他馬などを警戒している時などは両耳を後ろに伏せます。
威嚇の時なども正面から耳が見えなくなるほど後ろに倒します。
この他馬を警戒したり威嚇している馬や落ち着きのない馬などはレースに集中していない可能性があるのでパドックなどでチェックするとよいでしょう。
また、レースなどでは、気分よくリラックスして走ってる時などは耳がぷらんぷらんになっています。
逃げ馬の耳がこのような場合は気分よく逃げているので、能力を十分に発揮できている状態にあると考えられます。
いろいろレース中なども確認するとおもしろいと思います。
また、音に敏感な馬には、他に気がいかないように遮音効果のあるメンコなどを着用したりします。
■鼻
☆馬の鼻はとてもやわらかく物をつかむこともできます。
嗅覚はとても発達していて、他の馬のにおいや人のにおいも1人1人嗅ぎ分けることができ、においもよくおぼえています。
鼻先は擦りあわせて他馬とのコミュニケーションを行ったりもします。
ゲート内でとなりの馬の鼻先をかりて落ち着いたりする馬もよくいます。
☆また馬は鼻でしか呼吸できないため、呼吸器官としてもとても重要になります。
☆牡馬が牝馬の発情期に出すフェロモンを嗅ぎ取るための行動に『フレーメン』と呼ばれる行動があります。
興味のある人や物、初めて嗅ぐにおい、牝馬などでもフレーメンの仕草をすることもあり、興味のあるにおいをより感じ取ろうとする場合にする動作といわれています。
馬の鼻孔の下側には鋤鼻器(じょびき)と呼ばれるフェロモンなどを感じる嗅覚器官があり、フレーメンをする場合、鼻孔を閉じ上唇を引き上げ、鋤鼻器に空気を吸い込みより多くのにおいを取り入れます。
■口
☆馬の口はとても敏感にできていて、ハミを入れて手綱によって騎手とのコンタクトをとる為とても重要な部分です。
多くの馬が口内に少なからず問題をかかえていて、口内炎や傷によって食欲が落ち、調子を落とす馬もよくいます。
☆馬の歯は1年間でおよそ2mmほど擦り減ります。
草食動物の歯は、草を消化されやすいようにすりつぶして食べるため、他の動物よりも磨耗によって擦り減る量が多くなっているためです。
その分どんどん伸びてきます。
☆競走馬には高カロリーで消化もしやすい配合飼料やサプリメントなどを与え効率よく栄養をとります。
しかしもともと馬は1日に約16時間以上かけて少しずつ草を食べる習慣があるため、食事をゆっくりと時間をかけて食べさせないとストレスの原因にもなるそうです。
☆また、歯の擦り減り方により表面が鋭角になったり、ギザギザになったりした場合に噛み合わせが悪くなる為ハミ受けが悪くなり、ハミを嫌がったり、食欲が落ちたりします。
そのような場合はヤスリで削るなどして歯のメンテナンスを行う必要があります。
3歳ごろから歯が生え変わる時期になると、噛み合わせが悪くなり食欲が落ちたり、ハミを嫌がったりする場合などがあり馬のコンディションを整えるのがむずかしくなります。
3歳から5歳にかけて合計24本の歯が生え変わっていきます。
この時期の馬はあごの骨の成長などもあり、口内の変化がはげしいため体調の変化なども口内の健康に左右されやすくなります。
■尻尾
☆馬の尻尾は体にとまった虫などを追い払ったりするのに使います。
☆また、感情を表現する場合もあります。
恐怖や不安を感じたり、服従を表現する時には両後肢の間に巻き込みます。
気分が高揚すると尾を持ち上げて表現をします。
返し馬などで尾を高く上げている場合は気分が高揚し、興奮していることを表しますので注意してみてみましょう。
興奮のしすぎはマイナスですが、多少の興奮はいい方向に向かう場合もあるので、よく観察するとよいでしょう。
☆レース中、走っている時などにも尾を上下に振る馬がいます。
一杯になって苦しくなると振る馬もいたり、何か気になることがあった場合や、鞭に反応して振る馬などもいます。
■前肢
☆前肢はおもに着地の時の体重を支えたり、進行方向への舵取り、体を前方に送り出す推進力などの役割をもっています。
走行時に体重をささえるので、もっとも骨折などをしやすい部分です。
※競走馬の骨折の8割は前肢でおこります。
☆前肢の蹄は円形の形をしていて、後肢の蹄鉄より大きく体重をささえやすくなっています。
☆また、馬が何か欲しい時や訴える時には前肢で地面をかく『前がき』という動作をします。
■後肢
☆後肢はおもに筋肉の収縮により推進力を生み出します。
競走馬にとって速く走るためにはとても重要な部分です。
☆後肢の蹄は前肢の蹄より小さく、推進力を逃がしにくい先のとがった形をしています。
前肢、後肢、などについては別ページで詳しく説明します。(準備中です)