■首さしとは馬の肩から頭にかけてのラインをいいます。
馬は走る時には首も使って走ります。
まず、この首さしの角度は馬によって高かったり低かったりします。
一般的には低い方が好まれますが、地方競馬にはあまりにも低い馬もいっぱいいますので、一概には言えないと思います。
それよりも首の使い方が重要になってくると思います。
とくに長距離のレースでは首の使い方が下手だとスタミナの消耗もはげしくなります。
体全体の動きと合ったリズミカルでしなやかな首の使い方が理想的です。
一般的には馬体と比較して首さしが長く細い馬は長距離に向いていて、短く太い馬は短距離向きと言われています。
首が太くなると走りに無駄な力が入り、スタミナを消耗するためです。
同じ理由で頭が大きな馬は当然その分首も太くなり、走りに対する負担が多くなるのであまり好まれません。
■ここではき甲、背、腰、腹の部分をまとめて胴としています。
★き甲(肩の上の盛り上がった部分)
き甲は運動性においてとても関係が深い部分で、成長を計る部位としても有名です。
若駒ではあまり盛り上がっていませんが、成長するにつれて盛り上がってきます。
き甲が長くなると、肩の筋肉を支える肩甲骨(けんこうこつ)も長くなり、肩も長くなります。
肩が長くなると筋肉の付く量も多くなるので好まれます。
また肩甲骨が長く大きくなると前肢の振り幅が大きくなり、ストライドの大きな走りになりやすくなり、肩甲骨が短く小さいと前肢の振り幅が小さくなりピッチ走法になりやすくなります。
ストライド走法は小回りや雨が降り上滑りする馬場などでは、力が出し切れない場合もあります。
ピッチ走法は小回りや短距離、ダートに適した走り方になるのでチェックしてみると面白いと思います。
※ストライド走法、ピッチ走法については前肢、後肢とともに別ページで詳しく説明します。(準備中です)
★背と腰
背から腰にかけてのラインはゆるやかに上がっていくラインが理想です。
背の部分がへこんで傾斜がきついものは凹背(おうはい)、背っ垂れ(せったれ)などと呼ばれ、走った時に力が分散して負担がかかるためスタミナも消耗します。
★背と腹袋(腹のライン)
昔から良馬の見分け方として『長躯短背(ちょうくたんぱい)』という言葉があります。
これは背中が短く、腹袋がゆったりとしている馬が良しとされています。
背の長さが短く、腹袋の長さも短い馬は短距離向きの傾向があります。
逆に背が長く、腹袋が長い馬は長距離向きの傾向があります。
★き甲と尻
き甲は成長するとともに盛り上がってきます。
馬を横から見たときに、き甲の位置より尻の位置が高い馬は今後まだ成長する期待がありますのでチェックしてみましょう。
とくに3歳馬などチェックしてみると成長度合いもわかります。
★背割れ
馬を後ろから見て背骨をはさんで左右に贅肉がつき盛り上がっている状態を言います。
この背割れはあきらかに太い場合にでます。
休み明けなどの馬など注意して見ましょう。
■トモ(後肢)
トモは腰から後ろの(尻、もも、後肢)の部分をいいます。
この部分から走るための推進力が生み出されるため、重要な部分です。
幅、長さも十分にあり、骨格もしっかりして、筋肉が十分に付いて張っているのが理想的です。
このトモの骨格や大きさは推進力に影響があるので、大きければ大きいほど好まれます。
大型馬が好まれるのもこのためです。
★尻
尻の幅も大きく骨格のしっかりした馬は筋肉の付く量も多くなるので好まれます。
骨格のしっかりしたものは将来的にも期待がもてます。
横から見て尻のかたちが水平に近く平らなものを『平尻(ひらじり)』。
横から見て尻の上の部分が出っ張っていて斜めになったものを『斜尻(しゃじり)』と言います。
前肢
■おもに着地の時の体重を支え、進行方向の舵取り、体を前方に送り出す推進力を生み出す部位です。
馬の肢は膝から下には筋肉がないため、上膊、前膊の部分の筋肉と管の長さ、繋、前膝、歩様などをチェックします。
前肢を正面から見て、肘から下がまっすぐになっていて管の長さが短く、上膊、前膊の筋肉が十分についているのが理想とされています。
★前膝(まえひざ)
馬を真横から見て、前膝が引っ込んでいる場合は、故障もしやすく推進力を逃がしやすいので好まれません。
★管(かん)
管が短いと怪我もしにくく、筋肉の動きがスムーズに伝わり、脚さばきの軽やかな走りになります。
前肢の運びのへたな馬はその推進力を効率よく前方に伝えることができず、怪我もしやすくなります。
★球節(きゅうせつ)
この部分には筋肉はなく、腱の発育がいいと縦に筋のように見えます。
この腱がはっきり見えた方が理想的です。
バンテージを巻いている馬も多いので見ることはできないかもしれないですが、チェックしてみましょう。
★繋(つなぎ)
繋は路面から受ける衝撃を和らげるクッションのような役割とともに走行時は馬体を前方に移動する役割を持っています。
長さが長いとクッション性は高くスピードは出にくくなり、短いとクッション性は低いですが、スピードは出やすくなります。
また繋の角度は垂直に近いものはクッション性が低く、水平に近いものはクッション性が高くなります。
日本の芝のような固い馬場などでは、故障しやすいので水平に近いほうが好まれますが、ダートに限って言えば、砂自体がクッションの役割をはたしているのでよりスピードが出やすい垂直に近い角度で長さも短い方が強さを発揮することが多いといわれています。
馬体を前方に移動するためにやわらかい繋が理想的です。
★蹄
蹄の小さな馬は硬い馬場でより推進力を効率よく送り出せる芝向き。
蹄の大きな馬は馬体を前方に押し出す時にやらかい砂地に肢が深く埋まらないのでダート向きと言われています。
芝の場合、蹄が大きいと雨などの上滑りする馬場ではマイナスになります。
★また正面から見て肢が内側に曲がっているのを『内向』肢が外側に曲がっているのを『外向』といいます。
この前肢の形は理想的な肢はほとんどなく、多少曲がっていても問題はありません。
★馬が何か欲しい時や訴えてる時にみられる『前がき』と呼ばれる地面をかく動作は、癖の場合もありますがレースに集中していない場合もあるので注意しましょう。
後肢
■後肢は推進力に関係するとても重要な部位です。
後肢も前肢同様、飛節から下の部分には筋肉がないため、脛、飛節の部分の筋肉と角度、管、繋、歩様などをチェックします。
★脛(すね)
推進力を生み出す重要な部分なので長く幅もあり、十分な筋肉がついているのが理想です。
★飛節(ひせつ)
推進力を前方に送り出す最も大事な部分です。
前肢の曲がりなどはどうにかなるといわれていますが、飛節などはどうしようもないと言われるほど重要です。
まずその形によって大きく分けて2つに分けられます。
・横から見て、脛と管との角度が直線に近い(地面から垂直に近い)ものを『直飛(ちょくひ)』。
・脛と管との角度が直角に近い(地面から直角に曲がった感じの)ものを『曲飛(きょくひ)』と言います。
直飛は瞬発力は出にくいですが歩幅も大きくなり、推進力を前方に伝えやすいといわれています。
曲飛は踏み込みが深くなり瞬発力は出やすいですが、推進力が上にむきやすいと言われています。
曲飛は踏み込みが深いために前肢と後肢がぶつかり追突(前蹄と後蹄がぶつかること)もおこりやすくなります。
どちらがよくてどちらが悪いというのはありませんが、推進力を効率よく前方に使えるためには後肢と背中の使い方が重要になってきます。
後肢を見る場合には同時に背中の使い方も合わせて見るといいと思います。
背中を使って効率よくスムーズに歩く馬が理想的です。
※詳しくは前肢、後肢の別ページで詳しく説明します。(準備中です)
昔から『斜尻直飛(しゃじりちょくひ)』の馬はよく走ると言われています。
★管(かん)
横から見て尻の先端から地面に向かってまっすぐ管がのびているのが理想的です。
管が長いと大きな走りになるので好まれます。
★繋
前肢同様に繋ぎは路面から受ける衝撃を和らげるクッションのような役割とともに走行時は馬体を前方に移動する役割を持っています。
推進力をより前方に送り出す為に、やわらかい繋が理想的です。
繋が硬いと推進力が上ににげやすくなります。
胸前
■前肢のかきこむ強さや心肺能力に関係する部分です。
肩の部分と胸の深さ、幅、長さなどをチェックします。
ダートに重要な前肢のかきこむ強さに影響する肩の筋肉が十分についていて、横から見た胸の深さ、正面から見た胸の幅と長さが十分なのが理想です。
★肩
長さもあり、十分な筋肉がついているとともに、前肢の出もスムーズなのが理想的です。
肩が長いと肩の筋肉を支える肩甲骨も長くなり、前肢のふり幅も大きくなり好まれます。
★胸前(むなまえ)
心肺機能に関係する重要な部分です。
横から見て深さがあり、正面から見た幅、長さがあるものが理想的です。
あまりに幅のあるものはスピードはあるがスタミナのない短距離向きの傾向も見られます。
馬体重
■馬体重
健康な馬でも一日に10s以上馬体重が変化したりします。
排糞などでも2s以上減ったりもします。
なので多少の増減はまったく気にしないでいいと思います。
その馬の好走時の馬体重、前走時との比較が重要になってきます。
休み明けや転厩後など環境が変わった場合などには大幅に変わる場合もあるので、その時は馬体をチェックして、まだ太いのか筋肉の張りは十分かなどチェックしましょう。
若い馬などは休み明けでも成長分があるので注意が必要です。
馬には430キロ以下の小型馬から490キロ以上の大型馬がいます。
大型馬は体が大きいため小回りのコースでうまく回れなかったり、馬群の壁の間を瞬間的に飛び込む場合などに、マイナスの面があります。
しかし、斤量泣きしずらい。多頭数でもまれても他馬に弾かれない。疲労が抜けやすい。強風の影響を受けにくい。
などプラスの面も多いため、とくにダートではパワーを必要とするので大型馬のほうが好まれます。
芝では大型すぎると俊敏性や上滑りする馬場などで力を出せないこともあるので、あまり好まれません。
★参考(デビュー時に軽くても強くなってからは全ての馬が500キロ以上です)
ダートで活躍する馬たちの馬体重
馬名 | デビュー時からの馬体重 |
アジュディミツオー | 495〜544 |
フリオーソ | 488〜511 |
トーシンブリザード | 488〜511 |
カネヒキリ | 500〜534 |
ヴァーミリアン | 488〜528 |
サクセスブロッケン | 502〜522 |
※2009年6月までの出走時の馬体重。
その他
■コズミ
いわゆる筋肉痛のことです。
コズミになると歩幅が狭くなったり、踏み込みが小さくなったりします。
肩の出が悪い点などをチェックするといいでしょう。
返し馬をしっかりとやるとほぐれる場合もあります。
■フケ
牝馬が発情する事です。
春先から夏にかけて発情し、力を発揮できない場合があるので注意しましょう。
フケがきても好走する馬もいたり、冬に発情したり(ダラブケ)する馬もいます。
このフケを判断するのは非常にむずかしく、尻尾を振ったり、落ち着きがなくなったり、厩務員に体を擦りつけるような行動をとるとフケの兆候があると言われています。
いつも一緒にいる厩務員ですらわからない場合もあるくらいです。
発情期は2ヶ月の間に、3週間周期で4〜7日間続きます。
一般的には集中力も低下するフケは割り引いたほうがよいでしょう。
最近ではフケ抑制剤を使って、発情の時期を調整したりもします。
馬の気持ち
■馬の気持ち
おそらくパドックで一番むずかしいのが、この馬の気持ちです。
どんなに強い馬も走る気がないと勝てません。
馬も人間と同じで気持ちは行動になって現れてくると思います。
走りたい気持ちや調子は自然と歩様などにも現れやすいので注意して見てみましょう。
★落ち着いていて、他の事に気をとられずに適度な気合いを出し、前肢の出もよく背中、首などを使ってリズミカルに歩いているのが理想的です。
あまりに気合が入りすぎてイレ込んだ場合はマイナスですが、短距離の場合などはそのまま押し切る事もあるので注意が必要です。
★馬には、毎回一生懸命走る馬。気性が悪くムラのある馬。臆病でおどおどした馬などいろんな性格の馬がいますから、馬のやる気を見極めるのはむずかしく、その馬によって違ってきます。
パドックではやる気がなくても、騎手がまたがってから気合いを出す馬やパドックだけは気合いがのっている馬など、馬の気持ちは馬にしかわかりません。
今回はどれくらいの距離で屋根は誰が乗るのかさえ、馬はわからないと思います。
その馬がどんな気持ちなのか考えるととても面白いと思います。
最後に
■その馬の調子を見るには、その馬の前走時のパドックと比べてどうなのかが、重要になってきます。
しかし、普通は全てのレースを見ているわけでもなく、GTなどの馬以外では無理な話です。
普通は初めて見る馬たちがほとんどだと思います。
一般的な情報を参考に自分でこれは走りそうだと思った馬を買うのがやはり楽しくて一番いいと思います。
地方競馬の馬は中央の良血馬のように綺麗で立派な馬体の馬ばかりではありません。
どの馬も走らなそうなレースもあり、パドックでの判断がむずかしいこともありますが、自分の直感を信じて自分なりの馬の見極め方を見つけていくことが最も重要なことだと思います。
私が南関を好きになったきっかけも、始めたころにパドックだけ見て買った馬が勝ち、ワイドの万馬券を的中したことがきっかけです。
南関はクラス、組と、かなり細かくクラス分けされていて能力が拮抗するようなレース体系が組まれています。
つまり能力的にはかなり近い馬同士が走ります。
たとえ成績が悪くても、パドックで自分がいいと思った馬が勝つ可能性は十分にあるということです。
是非、パドックで穴馬を見つけてください!
前肢、後肢、走法などについては返し馬なども含めて別ページで詳しく説明します。(準備中です)